妊娠性エプーリスとは?歯ぐきにできるしこりの原因と出産後の経過を解説

      2026/10/20

大府市(愛知県)の歯医者、さいとう歯科こども矯正歯科で妊娠性エプーリスとは?歯ぐきにできるしこりの原因と出産後の経過を解説

こんにちは、大府市(愛知県)の歯医者、さいとう歯科こども矯正歯科です。

妊娠を迎えると、お母さんの身体には赤ちゃんを育てるためのさまざまな変化が起こります。
その変化は全身だけにとどまらず、口内環境にも大きな影響を与えます。そのひとつが「妊娠性エプーリス」です。これは妊婦さんによく見られる症状の一つです。
今回は、妊娠性エプーリスの原因や治療法を解説します。

 

妊娠中に口内環境が変化する理由

妊娠性エプーリスとは?歯ぐきにできるしこりの原因と出産後の経過を解説

妊娠期における口内環境の悪化や変化の中心にあるのが、女性ホルモンの分泌量の増加です。

妊娠が成立すると、母体を維持するためにエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)という2つの女性ホルモンが大量に分泌されるようになります。
これらの女性ホルモンは、歯ぐきに存在する毛細血管を拡張させるとともに、血管の壁から水分や成分が外に出やすくなる「血管透過性」を高める作用を持っています。
この生理的な変化によって、妊娠中の歯ぐきは通常よりも血液がうっ血しやすく、わずかな細菌や物理的な刺激に対しても過剰に反応して腫れや出血を起こしやすい状態になります。

さらに、このホルモンの影響に加え、以下のような妊娠期特有の生活環境や体調の変化が重なることで、口内の衛生状態は急激に悪化しやすくなります。

つわりによってデンタルケアが難しくなる

食事回数や嗜好が変わる

唾液の分泌量が減って口内が乾燥しやすくなったり、粘り気が強くなったりする

 

妊娠性エプーリスの病態・原因・症状

妊娠性エプーリスの病態や原因、症状について解説します。

 

エプーリスの定義と発生しやすい場所

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「エプーリス」とは、歯ぐきの表面に生じる、腫瘤(しこりやふくらみ)を指す総称です。
歯ぐきの結合組織や骨膜、歯の周りにある歯根膜などの組織が、慢性的な炎症や刺激によって過剰に増殖することで発生します。
良性の増殖性病変ですが、その大きさや発生する場所によっては、食事の際に歯で噛んでしまったり、日々のブラッシングを阻害したりして、生活の質や口内衛生に影響を及ぼします。

 

妊娠性エプーリスと一般的なエプーリスの違い

エプーリスは、妊娠の有無にかかわらず、歯石による慢性的な刺激や、合わなくなったかぶせ物による摩擦などが原因で、誰にでも生じる可能性があります。
一度できてしまうと、原因を取り除いたとしても自然に小さくなることは少なく、多くの場合は歯科医院での外科的な切除が必要となります。

これに対して「妊娠性エプーリス」は、発症の根本的な背景に「妊娠に起因する急激な女性ホルモンの増加」があります。
ホルモンの強力な後押しによって組織が異常増殖しているため、出産を終えてホルモンバランスが元の状態へと回復していくと、特別な処置をしなくても自然に縮小したり、消失したりします。

 

妊娠性エプーリスを引き起こす要因

妊娠性エプーリスの発生には、ホルモン環境の変化と、局所的な刺激の双方が関与しています。

 

女性ホルモンによる血管の増生

妊娠性エプーリスの主な要因は、エストロゲンとプロゲステロンの過剰な分泌です。
これらのホルモンは、歯ぐきの中にある微細な毛細血管の新生や増殖を強力に促します。

 

歯垢・歯石や人工物による局所刺激

妊娠性エプーリスは、ホルモンバランスの変化に加えて、歯ぐきへの局所的な刺激が原因となって発生します。
主な刺激源には、以下のようなものが挙げられます。

プラーク(歯垢)や歯石
細菌の塊であるプラークや、それが石灰化した歯石は、慢性的な炎症を引き起こします。

不適合なかぶせ物や詰め物
経年劣化などによって歯との間に段差ができたかぶせ物の縁や、古くなった詰め物の尖った部分が、日常的に歯ぐきを擦ることで刺激となります。

 

つわりや生活習慣の乱れ

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つわりの悪化によってブラッシングの回数が減ったり、細部まで磨けなくなったりすると、口内にはプラークが蓄積します。
また、酸性の食べ物を好むようになったり、食後すぐにうがいや歯磨きができなかったりする食生活の変化も、プラーク中の細菌を活発化させます。
つわりによる口内環境の悪化が局所刺激をより強固なものにし、エプーリスの成長を後押しするという悪循環が生まれてしまいます。

 

特徴的な症状と発現の傾向

妊娠性エプーリスには、特徴的な症状がいくつか見られます。

 

見た目の特徴と色調

妊娠性エプーリスは、歯ぐきの一部が丸く膨らんでいるのが特徴です。
色は鮮やかな赤色から赤黒い色をしていることが多く、表面はなめらかなものもあれば、細かな凹凸が見られるものもあります。触ると柔らかく、弾力があります。

 

痛みと出血

妊娠性エプーリスは、安静にしていれば痛みを感じないことがほとんどです。
しかし、しこりが大きくなって歯で噛み込んでしまうと、食事のたびに鋭い痛みが生じるようになります。また、噛み込むことで表面に潰瘍ができると、持続的な鈍痛を伴うようになります。

出血に関しては、組織の中に毛細血管が豊富に含まれているため、わずかな刺激でも血が出やすいのが特徴です。
血管の圧が高まっているため、一度出血すると止まるまでに時間がかかることもあります。

 

妊娠性エプーリスの治療方針と歯科医院での対応

お腹の赤ちゃんへの影響を考えると「治療を受けても大丈夫なのだろうか」と不安になってしまうこともあるかと思います。
ここでは、妊娠中における歯科治療について解説します。

 

妊娠期における治療の基本原則

妊娠性エプーリスに対する治療の基本は、保存的治療と経過観察です。
妊娠性エプーリスは出産後に自然に小さくなる可能性が高いため、妊娠中に外科的治療を急ぐ必要性は高くありません。
妊娠中の治療の目的は、しこりを大きくしている原因(局所刺激)を取り除き、これ以上大きくさせない、痛みを抑えて日常生活に支障が出ないようにコントロールすることにあります。

具体的な治療の流れとしては、まず歯科医院でしこりの周囲にあるプラークや歯石を入念に除去します。
その後は、自宅でのオーラルケアにより口内を清潔に保ちながら、しこりの大きさや色調の変化を定期的にチェックしていきます。

 

外科的切除が検討されるケース

以下のような症状が見られる場合には、妊娠中であっても安定期を選んで外科的にしこりを切除する手術が検討されます。

しこりが巨大化し、上の歯と下の歯で常に噛み込んでしまい、激しい痛みや出血が繰り返される場合

食事の咀嚼や、言葉を話す発音に著しい支障が出ている場合

頻繁な出血により、妊婦さん自身の貧血や精神的な消耗が懸念される場合

外観や組織の性質から、万が一にも他の悪性病変の可能性を否定できない場合


手術は、産婦人科の主治医と連絡を取り、妊娠状態や注意点を確認したうえで進められます。
手術自体は、しこりの根元を電気メスやレーザーなどで切り取る比較的短時間の処置であり、過度に全身への負担がかかるものではありません。

 

出産後の経過と自然退縮のメカニズム

出産後に身体が回復していく中で、しこりがどのように変化していくのか、その仕組みと産後の注意点について解説します。

 

なぜ産後にしこりが小さくなるのか

出産を終えると女性ホルモンの量が急激に減少するため、歯ぐきの毛細血管の増殖やむくみが収まっていきます。これに伴い、膨らんでいたエプーリスは徐々に小さくなっていきます。

多くはそのまま小さくなって消えますが、しこりが大きかった場合は、小さくなっても一部が口内に残ってしまうことがあります。
残ったしこりが原因で歯ブラシが当てにくかったり、噛むときに邪魔になったりする場合は、歯科医院で切除を検討します。

 

自然退縮までに要する期間の目安

出産後、しこりが目立たなくなるまでの期間には個人差があります。
数ミリ程度の比較的小さなしこりであれば、産後1か月〜2か月が経過する頃には、どこに出来ていたのか分からないほどきれいに消失することも珍しくありません。
しかし、大きく成長してしまったものや、長期間にわたって激しい炎症にさらされていたしこりの場合は、組織の形が元に戻るまでに時間がかかります。
消失するまでに半年以上の期間を要することもあり、焦らずに経過を見守る必要があります。

 

出産後もしこりが残ってしまう原因

出産を終えて数か月が経過しても、しこりが小さくならずに残ってしまうケースがあります。これには主に2つの理由があります。

組織の線維化(せんいか)
しこりの内部で長期間にわたって慢性的な刺激が続いた結果、もともとは柔らかく血管が豊富だった肉芽組織が、コラーゲンなどの硬い線維成分の多い「線維性組織」へと変化してしまうことがあります。一度線維化して硬くなってしまった組織は、ホルモンバランスが元に戻ったとしても、自力で吸収されて消えることが難しくなります。

局所刺激の残存
出産後も、そのしこりの原因となっていた合わない詰め物が歯ぐきに刺激を与えている場合などは、慢性的な炎症による組織の増殖反応は止まりません。


産後は育児や授乳に追われ、ご自身の口内ケアや歯科受診がどうしても後回しになりがちな時期ですが、産後3か月以上が経過しても小さくなる気配がない、あるいは硬いしこりとして残っている場合は、一度歯科医院を受診して相談することが推奨されます。

 

妊娠性エプーリスと区別が必要な口内の病変

歯ぐきにできるしこりには、妊娠性エプーリス以外にもいくつか種類があります。主な類似疾患について解説します。

 

化膿性肉芽腫(かのうせいにくげしゅ)

化膿性肉芽腫は、皮膚や口内の粘膜にできる良性のしこりです。男女や年齢を問わず、小さな傷や刺激、細菌感染などをきっかけに発生します。毛細血管が異常に増えたものであるため、赤く出血しやすいのが特徴です。

自然に消えることは少ないため、治療ではまず刺激の原因となっている歯石や合っていないかぶせ物を取り除き、口内を清潔にします。根本的な治療としては、しこりを根元から切り取る手術を行います。状態に合わせて、薬の注射や凍結させて取り除く方法をとることもあります。

 

末梢性巨細胞性肉芽腫(まっしょうせいきょさいぼうせいにくげしゅ)

歯ぐきや歯槽粘膜に発生する良性の増殖性病変です。

色調は妊娠性エプーリスよりもさらに濃く、暗赤色から青紫色、ときには茶褐色を帯びることが特徴です。また、この病変は大きくなるにつれて、しこりの下にある顎の骨の「骨吸収」を引き起こす性質があります。
見た目だけでは妊娠性エプーリスとの区別が難しいため、レントゲン撮影で骨の状態を確認したり、組織の一部を採取して顕微鏡で調べる「病理組織検査」を行ったりして確定診断を下します。

 

線維性エプーリス

エプーリスの中でも頻繁に見られるタイプです。歯石の刺激やかみ合わせの異常などによって、歯ぐきの中の線維成分(コラーゲン)が過剰に増えて硬いしこりを作ります。

妊娠性エプーリスとの大きな違いは、その「色」と「硬さ」です。線維性エプーリスは血管が少ないため、周囲の健康な歯ぐきと同じような薄いピンク色から淡い赤色をしており、触ると肉の塊のように比較的しっかりとした硬さがあります。また、血管が乏しいため、ブラッシング時の出血もほとんど見られません。
このタイプはホルモンの影響を受けているわけではないため、出産を経ても自然に小さくなることはなく、改善のためには歯科医院での外科的な切除が必要となります。

 

まとめ

大府市(愛知県)の歯医者、さいとう歯科こども矯正歯科で妊娠性エプーリスとは?歯ぐきにできるしこりの原因と出産後の経過を解説

妊娠性エプーリスは、妊娠期における女性ホルモンの増加に、プラークや歯石などの口内の局所刺激が重なり合うことで発生する、歯ぐきの良性なしこりです。
多くの場合は出産を終えてホルモンバランスが落ち着けば、自然と小さくなっていきます。

妊娠期間中に大切なのは、定期的なクリーニングと日頃のブラッシング環境を整えることで口内を清潔に維持することです。口内の衛生状態を良好に保つことは、エプーリスの悪化を防ぐだけでなく、お腹の赤ちゃんの健康を支えるためにも大切です。

 



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